2020年2月16日号。<1000キロ離れた深センでは / ダイヤモンド・プリンセスは美しい娘だった / エッセイ『ヒメジョオンの気概』:漆嶋稔>

 おはようございます。ヨロンです。
現在朝9時。窓の外は雨です。今日は月例よこはまマラソンの日なのですが、「雨の日は走らない」と決めている私はパス。一日降っているようなので、家で溜まった仕事を片付けます。

 昨夜は、怒涛の飲み会週間の締めを飾るべく、渋谷の「御厨」という居酒屋で呑んできました。
産直青魚専門 恵比寿 御厨
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13195448/

 魚の専門店で、少人数での飲み会や接待にも使える店です。鯵づくしの刺し身はもちろん、名物の大きな鯵フライは肉厚なのにフワッフワ。酒も良いところを揃えてあるのでお薦めです。勝谷さんの好きだった「新政No.6」や「十四代」も置いてありました。

 この一週間はすべて当たりの店ばかり。週に一日くらいしか飲みに行かない私にとって、こんなことは滅多に無いので、お伝えしておきます。東京でちょっと大事な飲み会がある場合は参考にしてみてください。最初にお伝えしておきますが、いつもこんな店ばかりに行っているわけではなく、たまたまこうなっただけです。

肉バル Chill(チル) 原宿表参道店
https://r.gnavi.co.jp/dt6ptty90000/
明治神宮前駅から少し(7分ほど)歩いたところにある店。とにかく肉!
炭にこだわり、牛、豚、鶏、そしてラムと何でも美味い。カウンターでひとり飲みから大人数の宴会まで対応できる。カジュアルな雰囲気の店なので、肉好きは是非行ってみてください。

南青山 ひふみ
https://hitosara.com/0006054077/
銀座線外苑前駅から3分ほど。鮮魚を中心に茨城の銘柄豚『極上美明豚(ビメイトン)のトンテキ』など、個性的で美味い料理が揃っています。日本酒と焼酎の品揃えもかなりのもの。少しこじんまりした店で、少人数で落ち着いて食事するのに適しています。完全個室もあり、商談や接待にも使えます。

半蔵門ビストロ ブレインストーミング
https://r.gnavi.co.jp/8djpesd30000/
肉割烹・肉ビストロというだけあって、鳥取和牛の絶品を揃えた銘店。ステーキはもちろん、肉寿司やレアカツレツ、生ウニといくらの極上土鍋など、最高の肉料理を堪能できます。落ち着いた雰囲気で個室もあるので、特別な日のお祝いや接待などに最適。

 今回ご紹介した店は、気軽な感じで入れる「肉バルChill」や、「ブレインストーミング」のような高級店までありますが、美味しく飲み、美味しく食べるだけではなく、じっくりと会話を楽しむにはどこもお勧めです。
私は、明日からまた「普通の居酒屋」生活に戻ります(笑)。

 さて、笑っていられない新型肺炎の動向です。昨夜は、なぜダイヤモンド・プリンセスから乗客を下ろせないのか、といった話も聞いてきました。
ロシア報道官が日本の対応を批判し、菅官房長官は「適切だった」といつもどおりの反論を返しましたが、日本国内では通用しても海外ではそうは行かず、アメリカは自国民を「救出」するためのチャーター機を手配しようとしています。

 なぜ、日本が中国に次ぐ感染国となってしまい、日本政府の対応の拙さが海外から批判されているのか。

 これに関しては、明日からの国会で追求されることになります。「待ったなし」でパンデミックを抑えなければならない政府官邸が何を考えて動いたのか、そして動かなかったことが明らかにされていくので、こちらでもできる限り解説を入れていきます。

 この『××な日々。』には、さまざまなプロフェッショナルの読者にいて、当事者もいることは何度もお伝えしています。
今日は、そこからおふたりのレポートとエピソードを紹介します。

 まずは、現在中国の深センにお住まいのMさんのメールから。
深センは、武漢市からおよそ1100キロ。車で12時間ほどかかります(GoogleMapによる)。東京駅から北九州の小倉駅くらいの距離となります。日本の感覚で言うと、かなり離れているようにも見えますが、それでもこのような状況ということです。

<わたくしは中国深センにおります。
現在隔離政策で自宅軟禁中? というか怖いので外出を極力控えるという状態です。
会社も開始できず自宅でもんもんとしております。
外出に対してはアパートから入出時携帯APPで事前申告して申告結果のコードを表示して見せることになっています。
もちろん体温検査は行います。
車でSAM’s会員スーパに買い物に行きますが、そこでも駐車場入出時に体温検査があります。
まだ物流は途絶えていないので食糧生活用品は問題なく購入できます。
マスクはまだないですが、車関係、鴻海フォックスコンなどの巨大企業がマスク生産を開始し来週あたりから供給開始と中国官報が放送しております。 多分これは本当なのだと思います。>

 ダイヤモンド・プリンセスの製造に関わっていたNさんからは、船に関してのエピソードをいただきました。火災についてはウィキペディアに多少載っていますが、そばで見ていた当事者の生々しいレポートは無いので、Nさんにお願いして掲載許可をいただきました。


—– : —– : —– :

【ダイヤモンドプリンセスは美しい娘でした】

 ようやく乗客の下船が始まったクルーズ船ダイヤモンドプリンセスは、ここ数日のニュースで常に扱われていました。
建造に携わった私は、変なところでまた注目を浴びちゃったなあと、その美しい娘の試練が早く終わることを願っていました。

 この船は同型二隻を同時建造したうちの本来は二番船になるはずのものでした。一番船が進水後の艤装工事中に大火災を起こしたため、急遽一番船に繰り上がりました。
そして、一番船に予定されていたダイヤモンドプリンセスという名前が付けられたのです。当初予定されていた名前はサファイアプリンセスでした。この名前は火災を起こした船に付けられました。

 サファイアプリンセスが三菱重工長崎造船所第2180番船、ダイヤモンドプリンセスが第2181番船です。所内では書類やメールではS2180,S2181、口頭では80番船、81番船と呼んでいました。

 繰り下がり二番船S2180の引き渡し直前には船主会社のご厚意で、特例として社員とその家族やパートナー会社、サプライヤー、地元政財界人士を対象とした内部見学会が催され、私も家族、両親を連れて参加しました。
火災は起こしたものの、それくらい客先に信頼され良好な関係を築いていたのです。引き渡し後の船の評価も最上でした。
https://ja.wikipedia.org/?curid=882724

 S2181は進水後の艤装工事中にさだまさしさんの小説を原作とした映画「解夏(げげ)」に登場しました。
大沢たかおさん演じる主人公の幼馴染(田辺誠一さん)が造船技師という設定です。
艤装岸壁を歩いていた大沢さんが、ちょうどタラップで船内に入ろうとしていた田辺さんを見つけて少し話をするというシーンでした。(現実には部外者が造船所内をうろつくことはできませんが、そこは映画でのことなので)

 以下はS2180サファイアプリンセスの火災に関する思い出です。
もう17年以上前のことで手持ちの資料も散逸しているので記憶に頼っている部分もあり、書いていること全てが事実という保証はありません。そのつもりでお読み下さい。

 当時私は船全般に関わる部署に所属していました。
火災は私のデスクがあったビルの真下の岸壁に係留されているときに起きました。午後6時半頃に「煙が出ている」と騒ぎになり、窓から見ると船内にいた約1000人の作業者が続々と避難してきました。
それでもその時点ではボヤ程度だろうという認識でした。船は進水後にも溶接など火気作業があるので、勿論厳重な防火対策は取っていますが、失火を完全に防ぐことが難しいのです。

 あまり緊迫感がないまま少し残業して退社し、乗り換えで待っていたバス停で何台もの消防車が会社に向かうのを見ました。
帰宅して9時のニュースで見たのは炎を上げて燃える船体でした。

2002/10/01 17:50頃火災発生
2002/10/03 05:45完全鎮火宣言

 幸いなことに、あれだけ派手な火事だったのに燃えたのは船首側上層の客室及びパブリックスペース部分が殆どで、エンジンを搭載した機関部の被害はありませんでした。そのため、燃えた部分とその周辺だけをごっそり取り換えて建造を続けることで船主会社の了解を得ることができました。

 この方針が決まるまでは、廃船にして全て一から作り直すなど色々なシナリオが検討されていたのです。

 影響を受けた部分は初期見分の時点で船体ブロックの50%余り、約15万ピースと見積もられました。これは船体構造のみの数であり、配管、配線、階段手摺などの交通装置、ドアなどの建具類は含まれません。家具や備品などの多くが搬入設置前だったことは不幸中の幸いでした。

 鎮火時点では内部に溜まった消火用水の影響で、目視でも分かるくらい船体が大きく傾いていました。
海保、警察、消防、海難審判庁などの現場検証が行われたあと、タグボートで香焼工場のドックまで曳航して、損傷した部分の撤去と、消火に使われた海水の洗浄から再建作業が始まりました。

 このとき香焼工場の別のドックではLPG運搬船とLNG運搬船が建造されていましたし、立神工場のドックではS2181が進水前の状態でした。

 当然、工程は大混乱になりました。
S2180の艤装内装工事で全国から集められていた作業員は当面の仕事がなくなりました。逆に、加工や鉄工、溶接作業は人員が不足します。さらに原材料、部品の調達は待ったなし。

 このとき商社及び各種サプライヤー企業がとってくれた協力は今でも語り草になっています。合言葉は「三菱を救え」。

 工場をフル稼働し、他の顧客への納品を後回しにして原材料や部品を供給してくれたのです。普段は納期設定や予量の精度で厳しい折衝を行っている打ち合わせの席で「必要な物を何でも最優先で用意します」と言われたときは本当に有難かった。

 勿論社内も一丸となっており、無事に二隻目を引き渡したときは「三菱の底力」と称賛されてそれが誇らしくもありました。これは同時に、当時の日本の物作りの底力が結実したのだと思います。

 火災発生が2002年10月、引き渡しが2004年2月と5月でした。

 一隻目S2181ダイヤモンドプリンセスの引き渡しのときは、まだ二隻目の作業に追われていたので、慌ただしい中で旅立って行ったという状況でした。

 二隻目S2180サファイアプリンセスの引き渡しのときは、上にも書きましたように内部見学会が開催されました。多くのクルーズ客船が作られている欧州の造船所でも引渡し前の見学会が行われることは殆どないようです。
5月22日(土)からの三日間で約三万人が参加しました。当日は見学者を4隻の小型船でピストン輸送し、一日で延べ50往復していました。
また、日曜の夜には「客船支援感謝の夕べ」という式典が対岸(市街地側)の臨海公園で開催され、遊覧船による港内遊覧や花火打ち上げも行われました。

 5月27日の引き渡しのときは多くの社員、関係者が岸壁に集まって見送りをしました。
女性社員だけでなく男性社員にも涙ぐんでいる人が沢山いて、工業製品の出荷ではありますが、手塩にかけた娘の文字通りの船出という気持ちだったのでしょう。

 火災から引き渡しまでの出来事はNHKのプロジェクトX的な物語性が色濃くあります。だから携わった人間はダイヤモンドよりもサファイアのほうへの思い入れが心情的には強いのです。

 二隻の関係は擬人化(姉妹化)して考えてみれば面白いです。

 ダイヤモンドは本来は妹だったのに、本人とは関係ないところで勝手に姉扱いされて、お姉ちゃんなんだから自分でどうにかしなさいと言われ、あまり構ってもらえなかった。その分気高く生きてきたし、美貌を買われて映画に出演したこともある。
サファイアは出生時の事故でハンディを負い、多くの人の助けを受けて社会に出ることができた。皆から愛されている。

この関係が二人の間に微妙な緊張感を与えている。その姉がこれまでなかった事態に直面して苦悩している。とかなんとか。

コロナウイルスで船内に留め置かれている方がまだおられる状況で少し不謹慎かもしれませんが。

 今日も、漆嶋さんのエッセイをお送りします。
命の危機が問われている状況下で、人間以外の命について考えてみるのも良いのではないか、と思えてきます。

—– : —– : —– :

【ヒメジョオンの気概】

漆嶋稔(翻訳家)

さて。
定まらぬ世にも変わらぬものはあるもので、ひとつご紹介申し上げます。

数ヶ月前、裏庭の雑草諸君にあらかた撤退いただいた際、ヒメジョオンには残っていただきました。この野草というか雑草と称されている一群の代表として、来春を迎えていただこうと思ったのであります。

この草は漢字では「姫女菀」と書くのだそうな。「菀」とは「庭、庭園」のことですが、「茂る、心が晴れ晴れとしない、鬱陶しい」という意味もあるとのこと。

なるほど。いかにも「雑草」の名前にふさわしい気もしますが、雑草的人間のわたくしとしては、些か面白くない。

だが、さらに調べてみると、「姫」+「女」+「菀」ではなく、「姫」+「女菀」であると判明しました。「姫」は英語で言うところの”little”か”tiny”。「女菀」は中国の野草だとの由。

何だ、その野草とは。早速中国語の辞書で確認すると、確かにありました。
「女菀:ヒメシオン(姫紫菀)。キク科。宿根草。根を薬用とする」
何でも、結石防止効果や利尿作用があるらしい。ほう、人の役に立つこともあるらしい。

生命とは不思議なもので、絶滅の危機に瀕した猛獣には、個体的には猛々しくとも哀れを覚えてしまい、小さき可憐な花と申せども、旺盛な生命力を感じることがあります。零下まで冷え込んでも霜が降りても、この裏庭のヒメジョオンは相変わらず可憐な花を咲かせ続け、その風雪に耐える姿は何ともたくましい。

わたくしも、改めて野草の精神を見習おうかしらんと玄米茶をすすりながら、密かに誓うのでありました。

ではまた。

365日毎日お届け!『勝谷誠彦たちのxxな日々。』

コラムニスト勝谷誠彦の盟友でポリティカルコーディネーターの高橋ヨロンが、365日原則として毎朝10時までにお送りするメールマガジンです。
内容は、時事ネタから勝谷ネタ、勝谷ゆかりの豪華執筆陣によるゲストコラムなど。また、サイトログインによるバックナンバー購読や勝谷誠彦デジタルデータの閲覧などが可能となります。

コメントを残す