2019年12月29日号。<獺祭ブランドの強さは桜井博志の理念にある / エッセイ『朋友来たりて痛飲す。』:漆嶋稔>

 おはようございます。ヨロンです。

 山口県徳山市に来ています。
 昨日は、12時発のANA便で羽田から岩国へ。極度の飛行機嫌いの私でも、さすがに3週連続となると慣れてくるものです。機内は帰省客で満席。そして餓鬼…いやいや、お子様が多いので子どもの声があちこちから聞こえてきます。
 私の横にはお母さんが3歳位の子どもを抱えて座っていて、前の席は幼稚園くらいの男の子が隣にいる母親と喋っていました。
 それ自体は別になんでもないのですが、子どもというのは思ったことをすぐに口に出します。飛行機が離陸するとき、私が体を固くしていると、その子が突然叫びだしました。
「おかあさん、落ちるんじゃない?落ちるよ!」
以前も北海道行きの便に乗ったときに同じことがあったのを思い出し、「おいおい、勘弁してくれよ」と、緊張度が増したまま岩国空港に向かいました。
 機内では観音さんの短編集「紫の女」を読んでいましたが、左隣の親子と右隣の小太りのおっさんに見られないようにしているさまは滑稽だったかもしれません。読まれて悪いものではないのに、ちょっと恥ずかしくなってしまうんですよね。のめり込んでいる自分が見られたくないということもあるかもしれません。

 今回の山口行きは、依田酒店の依田さんが企画した「桜井会長を囲む会」。岩国空港に着くと、旭酒造の松藤イケメン取締役がお出迎え。そして旭酒造本蔵へ行き、桜井会長と懇談したあとに獺祭の製造工程を見学しました。
 依田さんが「ここは変ですから」というように、獺祭の生産工場は、昔からテレビなどで見てきた「酒蔵」のイメージとは程遠く、清潔で、最新の機器が導入された近代的な工場です。
 桜井博志会長の理念もじっくりと伺うことができたのは、貴重な体験でした。いきなり「ヨロンさん、飛行機は大丈夫でしたか?」(笑)と心配していただいた後に、依田さんと会長の業界話を横で聞いていたのですが、旭酒造の目覚ましい展開も納得の行くものでした。

「美味しく安心して飲める酒を作る」

 獺祭がこれだけワールドワイドなブランドになると、いろいろなところから事業展開の話が持ち込まれます。みんな獺祭の価値を認めた上で、もっと多くの人たちに飲んでもらおうとするのですが、「安く、広く」普及させようとすると、ブランド価値は一気に下がってしまう。
 象徴的なのは、今年9月に起きたアルコール度数の違いによる26万本回収の事件。
<発酵終了時にアルコール度数が17%前後の原酒に水を加えて16%に調整する工程で、かき混ぜる作業を怠ったため、17%と12%程度のものが混在して出荷されたという。>(朝日新聞)
 健康被害などあるわけがなく、黙っていればおそらくわからない。バレても謝れば済むような問題なのですが、なぜあえて非難を受けながら6億円もかけて回収し、売上減も覚悟したのか。目の前の桜井会長にその疑問をぶつけると、予想どおりの答えが返ってきました。
「それをやっちゃうと、今はいいかもしれないけど、会社が続きませんから」
 製造工程を見学していると、最高品質の安定した酒を作るために、常に改良を重ねていくのがわかります。別の菌や小さな虫などが混入しないように厳密に管理された工場内でも、100%はありえない。それでも100%を目指して常に改良を重ねていく中で、もし問題が起きてもそれがわからなかったり、対策できなければ、それは工場にとっては命取りになる。美味しくて安心して飲める酒を作り続けるためには、問題を発見できる仕組みを作り、もし問題は起きたら、どれだけ費用や労力がかかりブランド価値が下がっても、やるべき対策をすべて取る、ということなのです。
「ブランドの価値は常に落ちていくんです」
という言葉が印象的でした。

 途中、西日本出版の内山社長、そして松田記子さんと合流し、夜はサンテレビの久保さんとおふたりの女性が加わって、徳山で「桜井会長を囲む会」となりました。地元のふぐと獺祭を、桜井会長とともに堪能するという贅沢な会。依田さんならではの企画です。久保さんとは、今年頭に私がインフルを振りまいた「偲ぶ会」以来だったかな、最初から全開トークは止まることもなく、桜井会長は2次会も参加してくれて、気がついたら日付が変わっていました。最後の方は記憶が……。

 山口と言えば安倍首相の地元なので「今日は悪口は言わないようにしよう」などと冗談も言っていましたが、幕末維新の舞台なので、維新ゆかりの場所が多くあります。
 本来であれば、もう一泊してこれらの地を見て回りたいのですが、年末ということもあって今日帰らなければなりません。それでも徳山に来たからにはは「回天記念館」には行かなければなりません。これは戦争の闇の歴史になりますが、なかなか来る機会も無いので、ここに寄ってから岩国に向かうこととします。

 漆嶋さんのエッセイも今年最後となります。来年も引き続きお願いします。
 漆嶋さんとはメールの感想をいただいたところから、中国事情か翻訳業についてのコラムをお願いしようと思っていたところ、予想していなかったエッセイの連載となりました。これが日曜日の連載にハマって、毎週楽しみにしている読者からの感想も届いています。
 今年は、トーラさん、観音さん、そして水島先生の連載からスタートしましたが、不定期の連載やエネルギー問題についての特別な寄稿もありました。プロの作家や各方面の専門家からの協力もいただきながら、来年はさらに新たな展開も入れていきます。

 まずは、配信の時間を早めることかな(苦笑)。

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【朋友来たりて痛飲す。】

漆嶋稔(翻訳家)

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