2013年9月30日号。<「おまえは既に死んでいる」東電を存続させるために原発を動かすって、究極の「本末転倒」でしょうが>。

2013年9月30日号。<「おまえは既に死んでいる」東電を存続させるために原発を動かすって、究極の「本末転倒」でしょうが>。

 2時半起床。
 さあ、疾風怒濤の週が始まった。今日から神戸、小倉と移動する。明日は神戸で新番組の発表だ。そのあと週末また関西。試合直前なのに、なかなか練習に行けない。ならば、どうやら風邪は完全に抜けたので、今日の『スッキリ!!』と『ザ・ボイス』の間にジムに行こうかと、無謀なことを考えている。
 昨日は金沢から地学部地質班の仲間である川西琢也君が来て、ランチを共に。呑み足りなかったので拙宅に招いて、更にかなり呑んだ。金沢大准教授を相手に『量子革命』などの本を持ちだして、無謀な論戦。あ~、醒めてみると恥ずかしい。

 バッタもんの時代の終焉。
 <堺市長選、維新敗れる/都構想反対の現職再選/橋下代表、辞任を否定>
 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309290366.html
 <大阪維新の会の橋下徹代表(大阪市長)が掲げる大阪都構想の是非が問われた堺市長選は29日投開票され、都構想に反対する無所属で現職の竹山修身(おさみ)氏(63)が維新公認で新顔の西林克敏氏(43)を破り、再選を果たした。民主党が推薦、自民党が支持した竹山氏に対し、橋下氏が前面に出た西林氏は大敗。都構想実現は不透明感を増し、橋下氏の政治的な影響力の低下は避けられない状況だ。投票率は50.69%で、前回の43.93%を大きく上回った。>
 まずはこの投票率を叩き出した堺市民に敬意を表したい。ようやく本当の意味での「政治の季節」がやってきたのだと思う。この20年間はさまざまな勢力が離合集散して、一見「政治の季節」のようではあったが、実はそうではなかった。「バッタもんの季節」だったのである。
 ところが、安倍晋三首相の登場によって「政治が世の中を変えうる」ことがようやくわかってきた。であれば、バッタもんには退場してもらおうというわけだ。ある意味でそちらへの「不信任」のために投票所に行った人が多かったのではないか
 票数の差以上に、さまざまな意味で象徴的な選挙だった。ご存じのように橋下徹大阪市長を政治家として担ぎ上げ、支えてきた最大のブレーンは堺屋太一さんだ。通産官僚だった池口小太郎さんがこのペンネームを名乗ったのは祖先が堺の商人だったからにほかならない。堺という町は、その意味でも「日本維新の会」にとって特別な意味があった。
 その堺屋さんが内閣官房参与になったあたりから私は「ははあん」と思っていた。堺屋さんは独特の嗅覚を持った人である。この人事を大マスコミは「憲法改正を睨んだ安倍さんと橋下さんのブリッジ」と喧伝したが、私は堺屋さんの個人的なリスクヘッジだと思っていた。安倍さんもそれをわかっていただろう。「ついて来るなら来てもいいですよ」的な維新に対するスタンスはこのあたりに始まっている。橋下さんのプライドがそれを許すかどうかだが、彼の幼児性は追い込まれてますます高まっているようだ。
 こんな細かいことには、かの業界にいっときいた私でないとなかなか気づかないと思うのだが、この記事の写真のクレジット「あれ?」と思いませんか。
 <橋下維新、崩れた足元/「常勝」大阪、巻き返せず/堺市長選>
 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309290340.html
 そう<時事>になっていますね。こんな大切な場面に、朝日新聞が写真記者を出さないわけはない。へ?と思って調べるとやはり裏があった。
 <大阪維新の会が朝日新聞社の取材拒否/広告掲載見合わせ巡り>
 http://www.asahi.com/shimen/articles/OSK201309290145.html
 <大阪維新の会は28、29両日の朝日新聞紙面に掲載を申し込んだ大阪都構想の広告掲載を認められなかったことについて、担当者から直接説明がなかったことなどを理由に、29日、取材を拒否すると朝日新聞社に通告した。>
 馬鹿じゃないの。橋下さんの判断だとすればさきほど書いた幼児性がますます増幅しているし、周囲の判断ならば、それが伝染しているわけだ。朝日側の言い分はこう。
 <「堺市長選の投票日が差し迫った時期に、今回の選挙の最大の争点を記載している内容の広告を複数回掲載することは、投票を読者に呼びかける『選挙広告』となる恐れがある」と判断して掲載を見合わせる>
 で、まあ説得力がなくはない。
 もっとも『週刊朝日』事件で借りがあるし、これまでさんざん橋下さんを持ち上げてきた朝日である。従来の彼の勢いだったら、こういうグレーゾーンには目をつぶって掲載したでしょうね。「勝ち馬に乗る」のは、朝日の社是(笑)。一日にして皇軍から進駐軍に乗り換えた伝統は『築地をどり』ならではのものだ。要するに、橋下徹さんの未来を、朝日はそう見限ったんだろうね。

 東電がわからない。というか、これだけさまざまな分野で成果をあげつつある安倍晋三首相が東電と原発問題については、なぜこうも違う方向に行くのかが私には理解できないのである。
 昨日はここまでいきつかなかったので、朝日新聞の「スクープ」といっていい、昨日の朝刊の1面に載った東電の社長へのインタビーューをまず引く。
 <東電社長「経費削り今年度黒字」/値上げ当面回避>
 http://www.asahi.com/business/update/0929/TKY201309280406.html?ref=com_top6_1st
 <東京電力の広瀬直己社長は28日、朝日新聞のインタビューに応じ、今年度中に柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働や電気料金の再値上げがなくても、今年度の経常損益を黒字にできるとの見通しを示した。発電・送電設備などの修繕費用の一部を来年度に先送りするなどしてコストを削り、利益を確保する方針という。>
 朝日は中の紙面で延々とインタビュー内容を書いているが、根本的におかしいでしょう。なぜ、この国では「東電を会社として存続させる」ことが国家的な目標になっているのか。そのことが、すべてをゆがめていて、まさにいつも私がここで言っている「本末転倒」なのだ。
 なんで大マスコミはモノゴトをもっとシンプルに説明しないのか。まずは「原発をこの国で維持していくことが安全かどうか」である。これについては、先週の朝日はなかなかいいインタビュー記事を載せている。
 <どうする汚染水/米原子力規制委前委員長、グレゴリー・ヤツコ氏に聞く>
 http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201309250923.html
 <--東京電力福島第一原発の汚染水漏れの現状をどうご覧になりますか。
 少し驚いたのは、タンクの水漏れを作業員が歩いてチェックしていること。水漏れという初歩的なことを監視する装置が設置されていないのか。安全システムや管理態勢の欠陥を象徴しているようにみえる。>
 痛烈ですね。「発展途上国」だと言われているのである。しかし、もっと本質的なのは後段にある。いちいち断らないとは言ったが、まだ私は、手間は異様にかかるにもかかわらずなんだか書き写すのって抵抗があって、やはり言ってしまう(苦笑)。本紙からです。ヤツコさんの結論。
 <個人的見解を述べれば現在の(100万キロワット級の)大規模な原子炉は事故が起きれば壊滅的被害をもたらすリスクがある。日本のような国土の狭い国は影響を受ける地域も小さくない。別の発電方法に目を向け、技術開発に専念するのが賢いやり方だと思う。 >
 うん、私も地学屋としてこれに尽きると思いますよ。地学屋というのは昨日もお送りした『天国のいちばん底』をお読みの方はわかるように、途方もない年代を相手にする。放射性物質の半減期や、何千年に一度起きる地震も、私たちの感覚だとわかるのだ。しかし外のひとには不可解なのだろうなあ。目先の「株券がクズになるかどうか」にいってしまう。株券は命を守ってくれませんよ。
 要するに東電は破綻を避けるために、原発を再稼働するというわけなんでしょう。この本末転倒ぶりはどうであろう。現場で繰り広げられているのはもう喜劇だ。
 <東電/柏崎ベント装置の事前了解を新潟県に要請/こう着状態解消>
 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTO85B6JIJW201.html
 <東京電力 の広瀬直己社長は25日、新潟県の泉田裕彦知事と県庁内で会い、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機へのフィルター付きベント装置設置に関する事前了解を求める文書を手渡した。こう着状態に陥っていた東電と県の協議は、東電が泉田知事の意向に沿って事前了解を求めたことで一歩前進する形となった。>
 つまりは放射能を含む気体を空気中に出すかどうかを、事前に地元の自治体と協議するというのだが、イザという時にそんなことをされると、日本中が危機に陥るからやめて欲しい。あの亡くなられたフクイチの吉田昌郎所長と官邸の間でどれだけ緊迫したやりとりがあったかを大マスコミは知っているはずでしょうが。それを、いち行政区の首長との間でやって、ちゃんと重大な判断ができると思うのかね。大マスコミが「おかしい」と言えばいいのだが、そうするとその地方で新聞が売れなくなる、テレビの視聴率が下がるから、やらないのである。
 つまりは東電という企業が存続するために私たちの命を危険に曝します、ということなのだ。なぜそこに左巻きで、なおかつ「反原発」のはずの朝日が突っ込まないのかなあ。そんなにまだ、将来の東電の広告を期待しているのだろうか。

 本当は週末に書きたかったんだけど、安倍晋三首相が頑張りすぎたのでハミ出した。いい本を紹介します。
 『キレイごと抜きの農業論』。
 http://www.shinchosha.co.jp/book/610538/
 <誤解(1)「有機農法なら安全で美味しい」誤解(2)「農家は清貧な弱者である」誤解(3)「農業にはガッツが必要だ」–日本の農業に関する議論は、誤解に基づいた神話に満ちている。脱サラで就農した著者は、年間五十品目の有機野菜を栽培。セオリーを超えた独自のゲリラ戦略で全国にファンを獲得している。キレイゴトもタブーも一切無し。新参者が畑で徹底的に考え抜いたからこそ書けた、目からウロコの知的農業論。>
 まったくその通りだと思いますよ。TPPを論じるには不可欠な論です。また、有機ナントカにひかれてしょうもない店に行くことの愚も教えてくれる。
 何よりも私が注目したのは著者の久松達央さんが「直販」にこだわっている点だ。この国で「直販」をやろうとすると、中抜きで食っている利権談合共産主義グループにまずは潰される。私がいい例で、この日記は「直販」ですからね。これをはじめて、しかもその効用をあちこちで説いていると「中抜き」をやっている連中から排斥された。つまりさまざまな番組から追い出されたわけですね。まあ、今週、そういう電波を使ってもざまあみろということをやってやる発表をするのでお楽しみに(笑)。
 「直販」もっと言えば「エンドユーザーと向き合う」という、もともとは資本主義の基本であったことを、この本はわかりやすく説いてくれている。1時間もあれば読めます。それもまあ、最近の新書を見ていてどうかとは思うのだが。私がうんと難しい新書を書いてやろうかな。わははは。

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