2020年6月21日号。<「高くても良いものを」バーミキュラの挑戦は日本が進む道か / エッセイ【おじいさんの乙女椿】:漆嶋稔>

<「高くても良いものを」バーミキュラの挑戦は日本が進む道か / エッセイ【おじいさんの乙女椿】:漆嶋稔>

 おはようございます。ヨロンです。

 久々に早い時間帯にお送りします。
 このところ、夜中までパソコンに向かっていたり、久々に飲みに行ったりして、なかなか起きられなかったのですが、今日は月に一度の「高野塾」の日。朝7時半からオンライン講義を始めるので、このメールが届くころは、裏方として配信作業に没頭しているはずです。

 仙台オフ会について、ご心配のメールもいただきました。ありがとうございます。
 すみません。「オフ会」などと言ってしまったので、パーティのような印象を持たれてしまったかもしれませんが、参加人数は多くて5人、少なければ3人くらいなので、ただの食事です。状況によっては簡単に中止とするので、今のうちは注意しながら進めるつもりです。


 現在行われている東京都知事選挙について、ホリエモン党の3人の候補者のポスターが連番で並んているのだが、そんなことはできるのか、という質問をいただきました。
 これは可能なんです。
 通常、掲示板のどこにポスターを貼るかというのは抽選で決めますが、それは受付の時間(朝8時半とか)に候補者が何人も来ている場合に限られます。
 まずくじ引きをする順番を抽選で決めます。それからその順番にのっとってポスターを貼る番号をくじ引きで選びます。つまり、最初に2回くじ引きして、やっとポスターを貼る場所を決めるのです。
 兵庫県知事選挙のときは、くじ引きで一度も当たりを出したことのない私が、なんと1番を引き当てました。もうこれで自分の役割は終わったと思うくらい感激したのですが、今にして思えば、それが地獄の始まりだったとは……。

 たとえば最初に6人がくじ引きで貼る場所を決めると、掲示板の1番から6番までが埋まります。その後に、立候補を届け出た人は7番になります。その次は8番。同時に届けなければ、順番に決まっていきます。
 つまり立花孝志氏は、届け出の開始時間からしばらく経って、落ち着いた頃に3人続けて12番目から14番目まで取ったのです。そして13番は自分にして、12と14をホリエモンの顔のポスターで挟むというトリッキーなことをやりました。掲示板のほぼ真ん中を独占することに成功したのです。

 法的には問題無いのですが、私から見れば、まるっきり当選ラインには届かないのに、何を馬鹿なことをやっているのか、と思ってしまいます。
 とはいえ、立候補することは尊敬します。300万円を払って自分の主張を堂々と述べる権利を獲得するのです。たとえ「泡沫」と言われようと、立候補というのは並の人間にできるものではありません。立花氏は、まず3人立候補させるだけで900万円を用意したのです。これはすごい。
 有名なマック赤坂氏は、立候補を自分の事業の宣伝に使っていると言われ続けましたが、資金難にもなりながら立候補を続け、「スマイル」の大切さを説きながら、今は港区議会議員です。
 案里候補だって……いやいや、今日はやめておきましょう。


 日曜日は前向きなニュースを取り上げていきましょう。
 バーミキュラというブランド名をご存知の方は多いと思います。メイド・イン・ジャパンの鋳物ホーロー鍋で一世を風靡した、愛知の誇る企業「愛知ドビー」のブランドです。
 老舗鋳造メーカーの3代目。土方邦裕、土方智晴の兄弟が「町工場から世界最高の製品を作りたい」という思いから、大ヒット商品を生み出しました。このストーリーだけで鳥肌が立ちそうです。

 オープンポット、ライスポットとヒット商品を生み出してきたバーミキュラが、このたびフライパンを出しました。値段はなんと1万5千円! それが、予約初日に6千台を受注。今頼んでも届くのは8月になるそうです。
<既に入手困難 バーミキュラ初のフライパンは「焼く」を再定義>
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00290/00008/
<鋳物ホーローフライパン「バーミキュラ フライパン」を開発した経緯について、愛知ドビー副社長の土方智晴氏は「鋳鉄のフライパンはおいしく作れるが、重くて扱いにくく、さびやすい。鋳鉄のフライパンのおいしさを超える調理性能と扱いやすさを兼ね備えたフライパンを作ろうと考えた」と語る。>

「良いものを安く」というのは商品開発の定番ですが、ベンチャー企業がこれをやろうとすると生産ラインの確保と販売ルートの開拓で大手に負けます。そしてヒット商品が続かないとすぐに大企業に飲まれてしまいます。
 日本には、多くのこうしたベンチャーが出ては消えていきました。消えなくても苦戦しているところも多い。
 その中で、このバーミキュラの愛知ドビーや、似たような名前の東京の会社バルミューダといった、「高くても良いものを」を形にする企業が、これからの日本が生き残っていくヒントを与えているように思えるのです。

 コロナで、おそらく日本だけでなく、世界的に観光のあり方も変わるでしょう。人間の消費行動も大きく変わるかもしれない。仕事の仕方も変わります。
 京都はコロナ騒動の前に戻ることができるのか。日本全国の観光地が、どこに行ってもチョンワチャンワということばで埋め尽くされるような状況に戻るのか。もしくは戻したいのか。
 以前も少し書いた記憶がありますが、これをチャンスと捉えて、まずは国内需要で盛り返す方法を考えるべきなのではないでしょうか
 バーミキュラのフライパンが、中国の富裕層に買い占められるというのであれば元も子もないのですが、日本のこれから進むべき道を、こうした新興企業が示してくれているのではないかと思うのです。
 ちなみに、愛知ドビーの土方兄弟の生年は、それぞれ1974年と77年。そしてバルミューダ創業者の寺尾玄社長は1973年生まれです。ホリエモンは1972年生まれ。

 悔しい気持ちもありますが、こうした世代が日本を引っ張っていってくれるのは頼もしくもあります。願わくは、政治の世界でもこの世代に活躍してもらいたいものです。

 そして、漆嶋さんのエッセイは「おじいさん」。道を切り開く若者と、その横で植木を愛でている老人。なんだか役割というものが見えたような気もしてきました。 

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【おじいさんの乙女椿】

 漆嶋稔(翻訳家)

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