2019年10月31日号。<首里城炎上 / 一芸百芸 ~円相から用筆法を考える~:水島二圭>

 おはようございます。ヨロンです。

 沖縄の首里城が炎上するという、大変ショッキングなニュースが流れています。今日の午前2時40分ごろ通報があり、6時34分にアップされた沖縄タイムスの速報でも、正殿と北殿が全焼していて、隣接する南殿もまだ燃えているということです。
<「沖縄のシンボルが…」首里城が炎上、正殿と北殿は全焼 住民に避難呼び掛け>
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/491375
<◆首里城とは
 1429年に成立した琉球王国の政治、外交、文化の中心で、1879年に最後の国王尚泰が明治政府に明け渡すまで栄えた。築城は14世紀半ばから後半とみられ、丘陵の地形を巧みに利用して造られている。戦前は国宝に指定。沖縄戦で焼失した。戦後、県が「守礼門」や「歓会門」を再建。正殿は琉球独特の宮殿建築で1992年、沖縄の日本復帰20周年を記念して国営公園として復元された。正殿前の広場は王国の重要な儀式が行われた場所。2000年、首里城跡が世界遺産に登録された。>

 今さら言うまでもありませんが、首里城といえば沖縄のシンボル。空港からモノレールの「ゆいレール」一本で行かれるので、沖縄観光では必ずコースに入っています。沖縄戦で消失したものを復元したとはいえ、琉球王国そのものを感じさせる威容は、重要な歴史遺産でもありました。県民だけでなく沖縄を愛する多くの人々が呆然とするほどの悲しみを感じていることと思います。
 まずは鎮火させることが。そして、おそらく首里城祭イベントの準備が何かしらの原因となっていると思われるので、その原因究明を進めていき、なんとか復元に向けて進めていってもらいたいと願います。

 本日、『新・血気酒会』を行います。最初に、先日行われた長居パークマラソンを振り返り、諸々の報告等を行ったあと、久々に依田さんを迎えて酒の話をする予定です。1年前を振り返り、アルコール依存症について語りあうことになりそう。

日時:2019年10月31日(木)19時30分より

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YouTubeLIVE
https://www.youtube.com/watch?v=NOD4YvfvzfI

 今回の水島先生のコラムも先週に続いて技術的な話です。このようなテクニカルな話題は私は大好きです。
 長居パークマラソンでは、「ただ走るな 善く走れ」の字をお願いしたところ、快諾してくださいました。このオリジナルTシャツを購入したいという声もいただいているので、検討します。

 先週、画像をサイトの方に掲載したところ、「見られない」という連絡が数件あったので、今日はログイン無しでまずは見られるようにしておきます。HTMLメールをお送りできればメール内でご覧いただけるのですが、携帯電話で受けている方は画像が表示されなかったり、そもそも受けられない場合もあるので、とりあえずリンクをたどっていただく方法にさせてください。

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一芸百芸  ~円相から用筆法を考える~

水島二圭(書家)

 大好きだった、というより、大変尊敬していた女優の八千草薫さんが亡くなりました。
 八千草さんは「理想のお母さん」とか「永遠のマドンナ」などと形容されていますが、私にとっては「女神」のような存在でした。
 今はただ、感謝の気持ちを込めて心からご冥福をお祈りするばかりです。 

 さて、前回は「くびれた線を一筆で書くことの難しさ」についてお話しましたが、今回はその関連で「円を一筆で書くことの難しさ」についてお話ししたいと思います。

 ボールペンや鉛筆で円を書くのはそれほど難しいことではありませんが、毛筆で書くとなると大変難しいことになります。
 筆で綺麗な円を描こうとするならば、書の極意とも言える「俯仰法(ふぎょうほう)」を会得しなければならないからです。
 俯仰法というのは、手のひらを上を向けたり下を向けたりさせながら線を引く運筆法で、基本的には「筆の穂先を常に来た方向に向ける」言い換えれば「筆の軸をこれから線を引こうとする方向に倒しながら書く」という運筆法のことです。
 そのことによって、筆の毛先がそろって美しい渇筆が生まれます。

 この技術的に極めて高度な俯仰法を会得した上で、高い集中力を持って書かなければ美しい円は書けませんので、古来、禅の修行としても取り入れられております。
 いわゆる「円相(えんそう)」あるいは「一円相(いちえんそう)」「円相図(えんそうず)」などと呼ばれるもので、その円相が描かれている掛け軸をご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。
 禅の教えでは、円が悟りや真理、仏性、宇宙全体などを象徴的に表現したものとされるということですが、「円窓」と書いて「己の心をうつす窓」という意味で用いられることもあります。

 円の筆法(俯仰法)については言葉で説明するより、実際に書いたものをご覧いただいたほうが分かりやすいと思いますので、下に掲げておきます。

円相連結

 左の円は筆を立てたまま書いたものですが、円の上部で穂先がはじけ始め、抜き去る時には完全に穂が開いてしまっています。
 右の円は俯仰法で書いたもので、線の縁がすっきりしていて、収筆部で綺麗な渇筆が生まれています。

 ここでお気付きかと思いますが、書の大字作品を見る時は収筆部分に注目してご覧になれば、その書き手の力量がほぼ分かります。
 上手な人の収筆部は綺麗ですが、下手な人の収筆部は汚く見えます。

 では、禅僧の書いた円相を二点見てみましょう。

禅僧 円相 2点連結

 左は江戸時代の臨済宗の僧、拙堂宗朴の円相ですが、大変見事な書です。
 一見すると、どこから始まりどこで終わっているか分かりませんが、よく見ると、上から時計回りに書き始め、一周して3時の位置で外側に筆を抜き去っているように見えます。
 滲みの少ない紙に、やや硬めの筆で書いているものと思われます。

 右は昭和50年に臨済宗大徳寺塔頭黄梅院二十世住職に就任した小林太玄和尚の作品です。
 茶掛け作品や色紙作品で大変人気のある禅僧ですが、この円相を見ると若干筆が立っているようで、3時の位置から穂先がはじけ始めているのが見て取れます。
用筆法にやや難がありますが、ゆったりとしたリズムで柔らかな量感を出しているのはさすがです。

 最後に、私の大好きな、江戸時代の禅僧仙厓和尚の作品を見てみましょう。
 書は「これ具(く)ふて、茶のめ」(これ食うて、茶飲め)と書いてあります。
 円相の線に全く気負いがなく、かつ、筆使いには俯仰法が感じられ、書の巧みさと円相が絶妙の調和を見せている傑作だと思います。

仙厓和尚作品

~一作献上~  「 韮咲けり 牡丹散りたるあとの庭 」 細見綾子

韮咲けり牡丹散りたるあとの庭 細見綾子

その匂いからは想像できませんが、さすがユリ科、と思わせる美しさと端正さを韮の花は持っているように思います。

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