2008年2月14日号。<ミートホープ社元常務と突然乗り込んでいった霞が関の役所は利権談合共産主義の巣窟だった>。

 4時半起床。
 一昨日の日記の日付が間違えていたのに今ごろ気がついた。昨日の配信の前にでも迂闊屋あたりが指摘してくれればいいのに、迂闊に過ぎる…とまた人のせいにする私。さすがに、2月と1月を間違えちゃいけませんね。すみません。
 訂正ついでに本文の中で「大自刀」とあるのは「大刀自」の打ち間違いです。「とじ」では出ないので漢字をバラバラに打ったらこうなってしまった。
 「大自刀とはどういう意味ですか」という問い合わせがスタッフにあったようだが、間違えているんだから辞書で引いてもわからないはずだ。これまたすみません。
 ちなみに「刀自」とは一家の家事を束ねる戸主のことで、多くの場合は主婦になるだろう。
 「大」がつくことによって、古い家の大家族の家事の長というニュアンスが出てくる。
 今日はバレンタインデーだと言う。クリスマスも含めて、毛唐の行事には一切関知しない私だが、世の中ではチョコレートを持ったお嬢さんたちが走り回る日だ。
 周知のことだが、バレンタインデーにチョコレートを相手に贈るというのは、日本ならではの珍奇な風習だ。もともとは業者が金儲けのために考え出したことである。
 2月14日が欧米で恋人たちのための日だというのは正しい。そもそもは、ローマ帝国で兵士の結婚が禁じられていた時代に、それを執り行ったバレンタインという坊主が、この日に処刑されたことがきっかけだという。
 死刑執行日を恋人たちの日にしてしまうあたりが、農耕民族にははかり知れない、あちらの方々の精神風土である。

 節分の豆まきはすっかり一般家庭では廃れてきたが、逆に日本人は2月14日にチョコレートをまくようになった。
 今年のバレンタインデーのチョコの売り上げは史上最高になりそうだという。エキナカ店舗の流行で、地下鉄の構内を歩いていても、そこここの店からチョコの匂いがして、甘いものが苦手な私としてはかなりな苦痛である。
 義理チョコとやらでも1000円を超えるものが出てきて、女性の過半が「義理チョコは苦痛だ」と感じているというデータもあった。にもかかわらずこの風習がますますエスカレートしているところに、今の日本人の惰弱さがあるように私には思われる。

 「KY」を恐れ、長いものにまかれる。「ただ生きる」人生に流され、流行りものはとにもかくにも買う。メディア効果などで売れ始めた単行本はすぐに100万部を超え、偽装や毒入りでも騒ぎになったものには飛びつくので、赤福に行列ができ、ギョーザの皮が馬鹿売れする。
 政治屋や土建屋の利権談合共産主義を嘲うが、なに、チョコレートを買いあさるお嬢さんたちだって、立派な利権談合共産主義者なのだ。「義理チョコ」という、世界に類を見ない風習こそ、談合によって利権をうまく分配し、ことなかれのままに生きていこうという、日本的村落社会が生み出したものだというのは、皮肉な見方だろうか。
 モッタイナイとか称して、牛乳パックやペットボトルのリサイクルに血道をあげることを称賛するマスコミが、なぜ、膨大な量のチョコレートが飛び交うバレンタインデーや、目立ちたがり屋が家を電飾で飾りたてるクリスマスには無批判なのだろう。
 都合によって主張を使い分ける、これまたやはり『偽装国家』のひとつの貌と言うほかはない。
 えっ?嫌味なひねくれ者のオヤジだって?わははははは。

 ことなかれを嫌うそのひねくれ者の私は昨日、利権談合共産主義の巣窟である霞が関に突撃してきた。
 この日記でも触れたし『SPA!』に長文のインタビューを掲載したが、ミートホープ社の不正な内部告発し、一連の事件の端緒を作った同社の元常務、赤羽喜六さんが農水省に乗り込むのに同行したのである。
 ミートホープ事件での、事前チェックの不備や内部連絡の欠落などの不祥事をを受けて、農水省は真相解明チームによる報告書を出した。ところが、そのチームは肝心の内部告発者である赤羽さんになんと、聞き取り調査をしていない。いわば「加害者」である役人どもから話を聞いただけで、報告書をまとめてしまっているのだ。
 しかも、赤羽さんがそれを詳細にチェックしたところ矛盾点がいくつも見つかった。
 赤羽さんとしては自分の告発で結果として会社を潰してしまい、100人を超える従業員たちを路頭に迷わせたという気持ちがある。であればせめて、きちんとした真相解明の報告書が出て、再発防止につながればと思うのだが、その報告書がデタラメとあっては気持ちの整理がつかないのだ。

 当初は地元の農政事務所に乗り込んでいた赤羽さんだが「本庁に行け」と言われて、霞が関の農水省に出かけた。しかし、相手の応対は木で鼻をくくったようなものだったという。。
 納得いかないとばかりに、その後掴んだ新証拠なども持って、この日再びアポイントをとって乗り込むことにしたのだ。そこでインタビュアーだった私に「援軍」を求めてきたのである。
 役人にきちんと応対させるには、メディアを使うに限る。そこで私は『SPA!』編集部の担当者のOさんと『ムーブ!』のKディクター以下のクルーを連れて行くことにした。アポイントをとった赤羽さんは「数人一緒に行く」とだけ伝え、私の名前は出していない。Kディレクターは独自に取材に同行するということを先方に伝えておいた。
 15時農水省前に到着した私たちはまず庁舎の前で今回の経緯についてカメラの前で話した。このあたりから背後の玄関あたりの警備員の数が増え始める。
 リポートを終えて中に入ろうとすると、警備員が阻止する。こちらはアポをとってあるので赤羽さんが行き先を名簿に書き込む手順を踏むめばいいだけなのだが、無線で上司を呼んだりして、焦りまくっている。私はカメラを回せと合図をした。
 「私たちの税金で作られた庁舎に納税者が正当な理由で入ろうとするのが阻止されています」カメラに向けてそうしゃべる。するとあら不思議。突然中に入れてくれるではないか。

 まず報道室に、というので行くと出て来た役人は「建物はとらないで下さい」という。「私たちの税金で作った建物を公共のメディが写してはならない法的な根拠をのべよ」と聞くと「いや、これはお願いでして。各社みなさんにお願いしていることでして」
 おわかりか。一事が万事こうなのだ。裁量なのである。「お上のお情け」ですべてが決まってきているのである。そしてそれをまかり通してきたのが「各社のみなさん」。つまり利権談合共産主義にどっぷりとつかった記者クラブの方々なのだ。
 今回は接触はなかったが、こういう時、記者クラブの幹事社というのはまちがいなく「あちら側」に立ちますからね。
 週刊誌記者としての私は、何度もそういう目にあってきた。
 だから『ムーブ!』のキチガ…もとい凄さがわかるでしょう。こういうカメラの入れ方を各社がやれば、あっという間に霞が関の権威などは吹っ飛び、何十兆円もの埋蔵金がまたたく間に発見されるだろう。しかし、その勇気も志も、大マスコミの方々にはないのである。
 ひょっとすると、今日あたり役所ではなく農水省の記者クラブから、朝日放送の報道に対して、抗議か嫌がらせがあるかもしれない。談合破りをされては、何十年も続けてきたぬるま湯が冷めてしまうからだ。

 二つの関門を突破してようやく私たちは消費・安全局に到着した。赤羽さんの相手をしたのは中村啓一食品表示・企画監視室長である。前回も赤羽さんは彼と面談しているが、その時は部下に対応をまかせて、中村さんは立ち会ったもののひとことも口をきかなかったらしい。
 私の顔を見て中村さんの顔がひきつる。「いつもメディアでお顔は…」などと言いつつ、赤羽さんの正面に座ったのは、こうなれば自分が相手をしなくてはいけないと思ったのだろう。
 ここでまたカメラを巡って一悶着。おもしろいことにやはりカメラを入れてはいけないという規則はないのだ。記者クラブの方々がそこを問い詰めずに慣例で過ごしてきただけなのである。
 だったら撮らせろと言うと中村さんは「1社に許すと、各社同じ絵をとってもらわなくてはいけなくなりますので」。そんな理屈はないだろう。1社だけ撮れれば、その社はスクープをしたということなのだ。
 それをせずに、スクープという利権を役所側が談合を主導して、各社に分配しているのが現状というわけだ。。
 記者クラブ制度というのはまさに「官製談合」にほかならないことがよくわかる。

 結局、冒頭だけカメラをまわすことで合意した。あとは嫌そうな中、ぬけぬけと録音をとることができたのは大きな収穫だった。
 ここでの話の内容については、おそらく来週の『ムーブ!』で紹介できるはずである。記者クラブから報道への圧力がなければ(笑)
 『SPA!』での扱いはまだ決めていないが、私のコラムの中で書くことになるだろう。そこでの紙幅が足りなければ、またここででも詳細を、あなたやあなただけに、ご紹介することにしよう。
 今日のところは、霞が関の役所とそこに棲息している人種がどういう連中かという雰囲気を、生々しくお伝えしたかった。
 まず、この「空気」を知らずして、利権談合共産主義を切り崩し、この国の根本的な治療をすることはできないからだ。
 取材を終えて廊下に出ると、北朝鮮の軍人のような警備員が二人、がっちりと私たちをはさんで余計なところに行かないようにしつつ、外へと丁重に送りだされた。胸の名札が裏返されているところがなかなか素敵だ(笑)。
 この雰囲気、限りなく私が体験してきた場所に似ている。支那や北朝鮮、あるいはアフリカや中東の独裁国家に。
 これまで私は頭で考えて利権談合共産主義などと言ってきたが、霞が関にあったのは、いや、ホントに共産主義国家だった。

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