平之助生きることは一筋がよし寒椿 五所
冬桜 世を幻と 思ふ日も 吉村ひさ志
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立ち枯れて この世の曙光 抱きしめぬ
初冬の 竹緑なり 詩仙堂
松本たかし玉の如き 小春日和を 授かりし
鰯雲ひとに告ぐべきことならず 楸邨
木枯や日暮れて白き干大根 中勘助
謙虚なる十一月を愛すなり 遠藤梧逸
サフランや読書少女の行追ふ目 石田波郷
立冬や手紙を書けば手紙来る 青邨
朝寒や息かけて捺す出勤印 爽雨
茶の花にかくれんぼする雀哉 一茶
露の世は 露の世ながら さりながら 一茶
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ…… 啄木
頬につたふ涙のごはず一握の砂を示しし人を忘れず 啄木
白玉の歯にしみとほる秋の夜の
冨士には月見草がよく似合ふ 太宰治
白樺の林明るき晩夏かな 成瀬正俊
山頭火朝は涼しい茗荷の子
風鈴の遠音きこゆる涼しさよ 草城
裏山に一つの道や葛の花 野村喜舟
子に母にましろき花の夏来る 鷹女
世をいとふ心薊を愛すかな 子規
うつくしや雲一つなき土用空 一茶
美しや月の中なる盆の人 加藤暁台
窓の灯の草にうつりて虫の声 子規
蜀山人今までは人のことだと思ふたに
たまさかは夜の街見たし夏始め 冨田木歩
象潟や雨に西施がねぶの花 芭蕉
夕立が洗っていった茄子をもぐ 種田山頭火
美しやさくらんぼうも夜の雨も 波多野爽波
あらたふと 青葉若葉の 日の光 芭蕉
縦書きの詩を愛すなり五月の木 小池康生
積み上げし書物の上の蝿叩 竹本白飛
目には青葉 山ほととぎす 初鰹 素堂
春の海 ひねもす のたりのたりかな 蕪村
世を恋うて人を恐るる余寒かな 鬼城
山又山 山桜又山桜 阿波野青畝
うららかや 猫にものいふ 妻のこゑ 草城
則天去私
初桜折しもけふはよき日なり 芭蕉
雪とけて村いっぱいの子どもかな 一茶
たんぽぽの花には花の風生まれ 汀女
春雨や小磯の小貝ぬるるほど 蕪村
ほろ苦き 恋の味なり 蕗の薹 久女
みんな夢雪割草が咲いたのね 鷹女
きさらぎや 人の心の あらたまり 大魯
いざ行かむ 雪見に ころぶところまで 芭蕉
葉牡丹や 女ばかりの 昼の酒 桂信子
寒椿 小さく赤き 一重なる 原石鼎
鍋もっておでん屋までの月あかり 渥美清
ふたり四人そして一人の葱刻む 西村和子
大晦日 定めなき世の さだめかな 西鶴 正
小鳥さへ啼かず冬木立静かなり 子規
沢庵や 家の掟の 塩加減 虚子
水島二圭 カレンダー2020(表紙)
秋の空 露をためたる 青さかな 子規
月天心貧しき町を通りけり 蕪村
韮咲けり牡丹散りたるあとの庭 細見綾子
「 一枚の紅葉 かつ散る 静かさよ 」 高浜虚子
さらさらと 栗の落葉や 鵙の声 漱石
行く人なしにこの道や行く人なしに秋の暮 芭蕉
よい秋や犬ころ草もころころと 一茶
秋風やむしりたがりし赤い花 小林一茶
「をりとりて はらりとおもき すすきかな」 飯田蛇笏
「 人生これ 二勝一敗 野分あと 」 斉藤凡太
名月や池をめぐりて夜もすがら 芭蕉
赤とんぼ筑波に雲も なかりけり 子規
子規庵
「をととひの へちまの水も 取らざりき」 正岡子規
平凡に咲ける朝顔の花を愛す 日野草城
露草も露の力の花ひらく 飯田龍太
「 烈日の 美しかりし 桔梗かな 」 中村汀女
何ごとも招き果てたる薄哉 芭蕉
暑中見舞い 涼風献上
匙なめて童たのしも夏氷 山口誓子
昼顔やどちらの露もまにあはず 也有
こんこんと水は流れて花菖蒲 臼田亜浪
六月を奇麗な風の吹くことよ 正岡子規
「のぼりゆく 草細りゆく 天道虫」 中村草田男
紫陽花やきのふの誠けふの嘘 子規
「暫くは 五月の風に 甘えたし」 柳家小満ん
「そら豆は まことに青き 味したり」 細見綾子
「チューリップ 影もつくらず 開きけり」 長谷川かな女
「若葉吹く 風さらさらと 鳴りながら」 広瀬惟然(芭蕉の門弟)
「げんげ田の 美しき旅 つづきけり」 久保田万太郎
菫ほどな小さき人に生まれたし 漱石 正
「逝く空に さくらの花が あれば佳し」 三波春夫 辞世の句
楷書の中で最も難しいと言われる唐の虞世南の書体に日本風の柔らかさを加えた書風で揮毫しました。作品右上の印は引首印と言いますが、「忠恕」と彫ってあります。
徹
ほろほろと山吹ちるか滝の音 芭蕉
「ひく波の 跡美しや 桜貝」 松本たかし
「椿落ちて きのふの雨を こぼしけり」 与謝蕪村
梅一輪 一輪ほどのあたたかさ 嵐雪
菜の花といふ平凡を愛しけり 富安風生
水仙に春待つ心定まりぬ 虚子
如月や日本の菓子の美しき 永井龍男
ときをりの水のささやき猫柳 中村汀女
紅梅の色にじませて春の雪 新田次郎
水島二圭書「年賀状」