2015年7月30日号。<帰還>。

2015年7月30日号。<帰還>。  4時半起床。  扉の前でひとつ大きく息をする。耳はもう中から伝わってくる聞き慣れた音どもをとらえている。懐かしさがこみあげて来る。一歩踏み出して中に入った。蛍光灯の光が目を射る。立ち止まると私は大声で言った。「ただいま、です」。いつもは「こんちわ~」なのだが、この日は違った。「です」は言うつもりはなかったのだが、何だか恥ずかしくて自然につけてしまったのだ。  帰ってきた。昨日、私は通い慣れたボクシング・ジムに行くことを得たのだ。心と身体がほぼ戻ったと判断したからである。心は鬱病であり身体は脚気による運動障害だ。その両方が重なっていたので、歩くことも困難で、ましてや運動などできるわけもなかった。それが、すべて消えた。  靴を脱いでフロアにあがる。さきほどから聞こえていたミットやサンドバッグを打つ音が大きくなる。タンタンタンというロープが床を叩

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